ただぼんやりと、移り変わる景色を見ていた。




                                     
――――――黄昏車窓




車内に満たされるオレンジ。
あと少ししたら、この柔らかなオレンジは、硬質な蛍光灯の灯りへととって変わる。
快斗は、空から、時にはビルの屋上から見やるその灯りが、嫌いではなかった。


車体が時折揺れては、停まり、また走り出す。
繰り返されるそれに、気つけば自分が乗ったときよりも車内は人口密度を増していた。
ゆるやかな日差しと、少し高めに設定されているであろう暖房に、頭が少しぼぅっとしている。
ふと、日差しが遮られた。
建物の影になり、一瞬だけ暗くなった車内。
眺めていた窓に微かに映った、人影。

一瞬息をとめた快斗の頬を、不意に柔らかな風が掠めた。
ほんの少しだけ息苦しくなってきていた車内に、誰かが窓を開けたのだろう。
詰まった呼吸に、爽やかな空気が入ってくる方向を向きたくはあったが、快斗はそれ以上首を動かすことができなかった。




何故、とか。
いつの間に、とか。
疑問が頭を掠めないではなかったが、すぐに気付くことのできなかった己が少しだけ悔やまれた。


特にこちらを気にした風ではない。ずっと窓の外を見ている。
全くの偶然であろう。
少しだけ、嬉しくもあり、寂しくもあった。


『次は緑台駅ー、緑台駅ー。降り口は――――』
車掌のアナウンスが聞こえ、目的の駅がすぐそこであることを告げる。


ガタッ。


ふいに襲った小さな揺れは、些か無理にブレーキを効かせたせいだったのだろう。
車内の幾人かの人がよろめいた。


自分はしっかりと吊り革を掴んでいたので平気だったが、
すぐ横に立っていた人が、僅かバランスを崩した。





不意に
―――――――微かに触れた、指先。




知らないはずの、その人と。
掠めた小指同士が、一瞬だけ、絡まった。






ゆっくりと電車は速度を落とし、やがてホームへと到着した。

快斗は振り返ることなく電車を降りると、
少しだけ詰めていた息を吐き出した。



小指にそっと口付けて、灯りのともり始めた街へと歩きだす。




「また会おうぜ、名探偵」



























































































偶然電車で隣に立っちゃう二人。
でも、互いに知らないふりをする。
でも、ホントは気付いてるんだって、ちょこっとだけ伝えたくて。
っていうのを全て客観で書きたかったのですけど・・・。
どうにも無理っぽかったので快斗編も付け加えてみました(汗)
ちなみに新一さんは景色を見てたんじゃなくて時々窓に映る影を見てたのです。
最後は外を見てたと思いますけどね。
色々深読みしていただけると・・・(笑)