*17話ちょっとずぎくらい。






校舎の脇を早足で歩く影がある。
日差しは傾きかけており、あたりは徐々に茜色に染まりつつあった。
グラウンドでは、授業を終えた生徒たちが思い思いのスポーツに興じている。
ここのところ頻繁に島に響き渡る警報も今はなりを潜め、平和な時間が流れていた。

前を行く一騎は黙りこんだまま、ただひたすらに歩き続けている。
総士は掴まれた手首に痛みを感じて、どうしようかと困った。
振りほどくべきではないと思う。
けれど、本当につい最近、一騎と総士は歩み寄りを始めたばかりで。
総士には、一騎が不機嫌そうな理由も、どこへ連れていかれるのかも、見当をつけることができなかった。

何も言う気配のない一騎に、このままというのも…と、
「一騎、どこへ…」
総士が声をかけると、
「あ、ごめ・・・」
呼ばれた一騎は、さっきまで意識を飛ばしていたんじゃないのかというような反応だった。
びっくりしたように立ち止まり、総士を振り返る。
辿り着いた先は校舎の裏側で、話をする以外に、特にすることはなさそうな場所だ。
「何なんだ?」
予想外の一騎の反応と、何も用事のなさそうな場所に総士が疑問を口にすれば、
「・・・・・・・・・・・何だろう?」
一騎もよくわからない、といった顔で首を傾げた。

一騎自身、自分のとった行動に頭がついていかない。
たまたま、サッカーボールが飛んでいった先に、総士と、1つ年下の女子生徒がいただけだ。
たまたま、その女子生徒が総士の手を掴んで何かを話していたところを、見てしまっただけだ。
総士はやんわりと、けれどもすぐにその少女の手をほどいたが、
なおも何かを言い募ろうとしていた少女に、一騎はとっさに総士を呼ぶと、
「ちょっといいか?」
と、ぐいぐいここまで引っ張ってきてしまった。

ただ、無性に心がざわざわして、気づいたら身体が勝手に動いていただけで。
別に総士に用事があったわけでも、話があったわけでもなくて、どうしたらいいかと一騎は俯く。
(何か、理由になることは…)
必死に言い訳を考えようとしていると、くすりと、小さく笑う声が聞こえた。
顔をあげると、総士の、ちょっと困ったような、けれど少し楽しそうな微笑があった。

「おまえは、わけがわからないな」
いつまで経っても用件を言わない一騎に怒ったふうもなく。
そこにある空気はとても穏やかで。

数年ぶりに見たかもしれない、自分に向けたれたその表情と、離されることのない手のひらに―。
どうしてだか、いっきに鼓動が駆け足になった一騎は、頭に疑問符を飛ばしながらも、顔に熱が集まるのをとめられない。












































































二人とも自覚ナシ。