キラキラと木々の緑が日差しを反射して光る。
梅雨があけてから日に日に日差しは強くなってきていたが、それでも今日は湿度も低くそれほど過ごし難い天気ではなかった。
緩やかに構内を風が吹きぬけていく。
服部はのんびりと、キャンパス内に広がる中庭の一廓へと向かっていた。
(今日で工藤の試験も終わりや)
やっと心置きなく工藤と会える。

服部は歩きながら昨夜のことを思い返していた。
昨夜は、証拠品の維持が難しく早期に解決できなければ迷宮入りしてしまうのではないかという事件があり、服部も新一もその現場にいた。
事件が解決したのは日付がかわってからで、今日が前期最終試験である新一は、事件解決とともに慌てて帰っていったのだが。
(きっと睡眠不足でふらふらしとるだろうから、ついててやらな心配やしな)
待ち合わせもしていないのにこちらにやってきた服部に、不思議がること間違いなしなちょっと鈍めの名探偵に、ただ会いたかったというのでは納得してもらえないだろうからと、心の中で言い訳を作る。


やはり事件中ではゆっくり顔も見られないし。
試験が終わったのだから堪能させてもらいたいもんや。




そうして試験終了の時間に合わせて訪れたキャンパス。
有名人の彼の所在などそこいらを歩いている学生を捕まえて聞けばすぐにでもわかるというもので、中庭の東屋にいるのを見かけたという情報にしたがって、服部は逸る気持ちを押さえつつもその場所へと向かっているのだった。


「お、おったおった」
遠目から、東屋のベンチからはみ出した髪の毛が見える。
(なんや工藤、今日は頭ボサボサやのぉ)
昨夜シャワーを浴びた後、髪を乾かさずに寝てしまったのかもしれない。
不精な工藤なら有り得ることだと、服部は小さく笑いながらその背中へと声をかけた。

「よ、くど・・・・」
「・・・」
けれど覗き込んだ視線の先には予想に反して
――――――――――――――

人差し指を口の前へと持ち上げて静かにするようこちらを見上げた新一によく似た、しかし新一ではない男が座っていた。
(コイツ、確かこの間学食でメシ食ってるときに来た・・・)
思い出しながら更に視線を下へと動かせば・・・

「!」

その男に膝枕をしながら安心しきった顔ですぅすぅと寝息を立てる新一がいた。



木漏れ日の差し込むそこには、ひどく穏やかな雰囲気が漂っていて
――――――



「なっ!おまっ・・・!」
「昨日ほとんど寝てないみたいなんだ」
どういうつもりやと思わず声を荒げそうになった服部に被せるように、小さな声で男が言った。
「そらそうや、昨夜も遅うまで現場におったから・・・」
―――だから自分が付いていてやろうとわざわざキャンパスまでやってきたというのに、この男は何なのだ。

二人の様子が随分と親しいように感じられて、胸の辺りがざわざわしだすのを服部は止められなかった。
そんな動揺からどんどんと目付きが険しくなっていく服部に、男は少し笑ったようだった。

「大丈夫」
「・・・」
(何がや)
余裕な態度の男に、工藤はオレと付き合っとんのやと告げようと口を開いた瞬間、
「服部くんのことは聞いてる」
男がもう一度、今度は人好きするような顔で笑った。

「・・・」
「だから交代」

男がそう告げた時、服部はいつの間にか自分が肩に力を入れていたことに気づいた。



ほっと息を吐き出しながら服部は改めてその男の顔を見る。
(工藤によう似とるから、親戚か何かかもしれへんな)
何にせよ自分は無駄に動揺していたようだ。少しだけ照れながら服部は、
「工藤が世話かけて悪かったな」
小声で男に謝った。


「いや」
男は軽く頭を横に振ると、服部を自分の隣へと手招きする。
「起きちゃうからそっとな・・・」
ゆっくりと両手で新一の頭を持ち上げて自身の身体をずらす男の動作に、新一は起きる気配すらない。
(普段から人の気配に敏感なヤツなのに珍しいこともあるんやな・・・)
そう思っていると、先ほどまで男がいた場所へ動くよう目線で指示された。
「疲れてんのやなぁ・・・」
「そうだな」
言いながらそっと服部の腿の上に新一の頭をのせた男は、
「それじゃ、オレ帰るから。後よろしく」
さっさとその場を離れようとした。






「・・・かい、と?」













































































































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別にとりたてて修羅場とかにはなりませんでした・・・。