男――――快斗が新一から手を離した瞬間。
「・・・・」
「・・・新一」
今まで気持ちよさそうに寝息を立てていた新一がパッチリと目を覚ました。
「起こしちゃったか、ゴメン」
「あ、いや・・・どこ行くんだ?・・・ん?服部!?」
眠る前とは打って変わって寝心地の悪い枕に上を向いた新一は、居るはずのない人物に膝枕をしている自分に驚いて慌てて飛び起きた。
「おはようさん」
「・・・・」
目だけで説明を求めてくる新一に苦笑して、
「服部くんが新一訪ねて来たからさ、交代してもらってお邪魔虫は退散しようと思ってたとこ」
快斗は状況を説明する。
「お邪魔虫って何だ・・・。てかすっかり寝ちまって悪かったな」
「いや。疲れてたんだろ」
「まぁな〜警部も人使い荒いよなぁ」
「好きで関わってるくせに」
和やかに会話を始めた二人に、服部は何か面白くないものを感じて
「なぁ工藤、ソイツ誰なん」
それを遮った。
「あ、あぁワリィ。服部には話したことなかったんだよな」
「前に学食でおうたんは覚えとるけど・・・」
そういえばあの時は紹介しなかったんだよなぁと呟きながら立ち上がった新一は、快斗の隣に並ぶと服部のほうへ向き直った。
「コイツは快斗、黒羽快斗。被ってる講義が多くて、色々世話になることが多いんだ」
それに合わせて快斗はにこりと笑う。
「どうも、黒羽快斗です。よろしくな」
「んで、こっちは服部」
「服部平次や、よろしゅうな」
どことなく憮然とした表情の服部に、
(名前の呼び方が原因かな?)
理由を考えて苦笑した快斗は、
「邪魔するのも悪いし、オレ行くな」
じゃぁと片手を上げて踵を返した。
「え、もう帰んの?用事あんのか?」
この後一緒に飯でもと思っていた新一は、快斗の早々の退場に小首を傾げる。
その様子に快斗は少し困ったように笑って、
「まぁ、そんなとこ」
新一の頭をポンポンと叩くと、今度こそその場を後にした。
服部は、そんな二人の様子に微妙な心境になりながらも、
新一が快斗に自分のことを話していたことを少し嬉しく思っていた。
一方新一は、そういえば誰と付き合っているか話した記憶はないのにあっさりばれていたこと、そして男と付き合っていると知っても快斗の態度にとりたてて変化が見られなかったことに少々の安堵感を覚えつつも、
(・・・気なんか使わないでほしい)
去っていく快斗の後姿に、何故だか寂しさを感じていた。
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短け・・・。