その日は珍しく服部が会いに来ない日だった。
ゼミの親睦会だそうだが、何でも親睦会でまで出席をとるそうで。
ぶーぶー文句を言っていた服部だったが、いつ事件で行けなくなるかわからないんだから出席できるときは出席しとけという新一に、謝りながらもそちらに向かうことを決めたようだった。





(・・・・平和だ)
久しぶりに訪れる穏やかな午後の講義に(自身が午後の講義を取っていない日は大抵服部も一緒に聴講していたので)、思わず欠伸をしていると、
「・・・ふぁあ・・・」
隣の席で同じように欠伸をしているヤツと目があった。
目があった相手は、二三度瞬きをすると、にっと笑ってノートに何かを書きだした。
追うように覗き込めば、
『この講義って眠くなるよなぁ』
そう割合綺麗な文字で綴られている。
新一は思わず確かにと思ってしまったので、その下に、
『同感』
そう書いた。
一般教養科目であるこの授業は、他の授業や単位数との兼ね合いで取ることになってしまったが、物凄く興味を引くという内容ではなかった。
『オレとしてはもっと具体的な内容を希望してたんだけど、結構概論っていうか総論っぽいよな』
『俺もそう思った。今回の例なんか掘り下げたほうがいいのに。例えば・・・・』
そうして随分と専門的な話を書き連ねた新一は、書き終える頃になって漸くその事実に気がついた。
(ヤベっ、引かれっかもなぁ・・・)
過去に何度か自分が持っている知識を当たり前のものとして話し、遠巻きにされてしまった経験がある。しかし、既に書いてしまった以上わざわざ消すのも変な気がするしと、引かれるのを覚悟していると。
『そうだよなぁ。でも、オレはどっちかって言うと・・・・』
自分が書いたもの以上に専門的な内容が返ってきた。しかも面白い。
思わず顔を見つめてしまうと、どうした?というように首を傾げられた。
新一の口元に僅か笑みが浮かぶ。
(もしかしたら、この分野においてだけ専門的なのかもしれない)
多分違うと直感でわかっていたけれども、新一は試さずにはおれなかった。







教授が講義の終了を告げる。
多くの生徒が欠伸や伸びをしながら席を立ち始めるのを、新一は上機嫌に眺めた。
「あ〜面白かった!」
先程まで、随分と濃い内容の筆談を繰り広げた相手がのんびりと言う。
新一も同じ気持ちであったが、正直まだ話し足りなかった。
筆談では、喋るよりも速度は遅くなってしまうし、どうしてもテンポのよい会話というのは楽しめない。
「な、オマエこの後何か予定あんのか?」
初対面の相手にいきなりかと思ったが、目の前の男に対する好奇心には勝てない新一だった。
「特にねぇよ、一緒に飯でも食う?」
実はもう少しアンタと話したい気分だったりするんだけど、そう笑う相手に、自分から誘うつもりだった新一はにこやかに了承した。

学食は人が多くてイヤなのだというその男に、勿論新一も同意見だったので、いい店を知っているという男に案内を任せ。
出向いたそこは新一も気にいるような店だったせいもあり、その店が閉店するまで粘った二人だった。































































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今回はちょっと短め・・・。