そうして心置きなく睡眠を貪った新一が目を覚ました頃に、ちょうど講義も終了し。
そういえば今日も服部と学食で待ち合わせだったなと、大きく伸びをしながら席を立つ。
そのまま先程の講義のノートを渡してくれた快斗に、礼を言いつつ、後で飯でも奢ると約束した。
「新一、昼飯は?」
隣を歩きながらのんびりと問いかけてきた快斗に、服部と待ち合わせていなければコイツと一緒に飯食いたかったな・・・とぼんやり新一は思う。
「・・・・あー・・・・」
「?」
僅かに言い淀んだ新一に、快斗は不思議そうに首を傾げた。
「あの、さ。オレ・・・付き合ってるヤツがいて・・・」
「あ、そか」
それだけで何を言いたいか察したような快斗が、じゃぁ仕方ないかと笑う。
「あ、いや、毎日じゃないんだ。月火と木曜はソイツが来るんだけど、それ以外は・・・」
「そっか。ならそれ以外はオレと食おうぜ?」
焦ったように付け加える新一に、快斗は少し吹き出すと、そう提案してきた。
勿論そう続けるつもりでいた新一は二つ返事で頷いた。
「・・・それにしても意外だな」
学食への道すがら快斗が呟く。彼は学食の奥にある生協に用があるとかでそのまま新一についてきていた。
「何が?」
「いや、気を悪くしないで欲しいんだけど。新一ってさ、話聞いた限りだと恋愛云々疎そうかなって思ったから・・・」
付き合ってるヤツがいるのが意外。
「あぁ・・・いや・・・」
知り合ったばかりなのに、既に見抜かれているような気がして、新一は自分はそんなに解りやすいのかなと思う。
「・・・実際よくわかんないんだ」
「え?」
続いた新一の応えに、対する快斗は不思議そうな顔をした。
その邪気のない表情に新一は暫し沈黙する。
自分の取っている行動が流石に感心できるものでないことはわかっていたから、言おうか言うまいか少しだけ迷ったが、何となくコイツには言っても大丈夫なんじゃないか、そんな気がして、新一は小さく息を吸いこむと昨日は口にしなかったことを話し始めた。
「嫌いじゃなかったら付き合ってくれって言われて・・・・それで付き合ってるけど。友達と何が変わるわけでもないし・・・正直わからない」
・・・・いい加減なヤツだって思うか?
表情を変えずに話を聞く快斗に些か不安になって、新一が問いかけるように視線を上げると、頭をぽふんと叩かれた。
「行動してみなきゃわからないことだってあるもんな」
そうしてニッと笑う快斗に、新一は心が少し軽くなるのを感じる。
彼は会話上手であるだけでなく、優しいのだろう。
「それじゃ、オレ、こっちだから」
新一がぼんやりしている間に辿りついた分岐点に、いつの間にか快斗は軽く手をあげて生協へと歩きだしていた。
「あ、快斗・・・!」
何となく、昨日のように別れがたさを感じて、新一は無意識に声をあげてしまう。
だって今日はまだ、それほど喋っていないのだ。
「?」
振りかえって視線で問うてくる快斗に、だからといって何を言うつもりだったのだろうと新一自身不思議に思う。
しかし呼びとめてしまったので何か言わねばと、一瞬辺りを見まわして、ちょうど学食で食事を摂る学生たちが視界に入った。
「その・・・晩飯!今日の晩飯一緒に食わねぇ?」
そんな新一の様子に、快斗は一瞬ほけっとなった後、ぷっと吹き出すと、
「OK、どうする?」
そう言った。
「・・・・じゃぁ・・・」
待ち合わせの時間と場所を言おうとして、そういえば服部がバイトまで居座りそうだということに思い至る。
出先での待ち合わせでは遅くなってしまう。それなら――
「7時にオレんちでいいか?」
そう告げた新一に、了解、そう言いながら快斗は生協へと消えていった。
NEXT
書きたいシーンはずっと先・・・。
ところで生協ってマイナ―ですか・・・?(汗)