工藤邸へと到着した3人は、早速途中スーパーで買い込んだ酒やつまみを広げると、
「工藤が今日事件に遭遇しなかったことに乾杯」などと言って、飲み始めた。
3人ともかなりの酒豪であったため、お互いがお互いにつられる形で結構な量を飲み進めていたが、ほんのりと酔った状態で気心の知れた友人たちと交わすお喋りは楽しいもので、そのことが更に杯を呷る手をすすめさせた。
最近出た推理小説の話や昨今の世界情勢、大学での講義の話など、会話は多岐に及んで途切れることはない。

「せやから、あん時はな〜〜」
「オメェがドジだったって話だろ」
「あはは、服部かっこわりぃ〜」
ついでに出てきた服部の失敗談に、一人は情けない顔をし、残り二人が声をたてて笑っていると、情けない一人を哀れんだかのようなタイミングで彼の携帯が電子音を立てた。

片手で謝る仕種をして電話を取りながらリビングを出ていく服部に、残された二人は笑いを収めると再び酒を呷る。
「事件かな」
「だったらまずオレんとこにかかってくる」
「それもそうだ」
そうしてまたくすくすと笑いあっていると、リビングの扉が開いて済まなそうな顔をした服部が顔を出した。

「どしたん?」
黒羽が問いかけると、
「それがな〜」
服部は申し訳なさそうに頭をかきながら状況を説明した。

何でも下宿先の親戚の家で水道が故障したそうで。
とりあえず見てはもらえないか(探偵まがいのことをやっているのだから、そのくらいどうにかできるだろう)とのことだそうだ。
「探偵は水道の修理なんてできひんと思うけどな〜」
そう言いながらも、世話になっている人からの頼みでは断れないらしく。
付き合い悪くてスマンなぁなどと言いながら、服部は工藤邸を後にした。


残された二人は急に静かになった空間に、服部の騒がしさを感じて少し笑ったが、特に気にすることなく飲みを再開した。



他愛無い会話を交しつつ呑み進める。
服部がいないと必要以上に騒がしくなることはなかったが、多くはない会話の応酬はそれでも心地よいものだった。
そうしてゆっくりと時間が流れ、服部が飲むはずだった酒までも二人で粗方片付けた頃。
杯を呷る黒羽の喉を何とはなしに見ていた新一は、ふと思い出した疑問に目を細めた。
――――――コイツはオレを抱かない)
新一もだいぶぼんやりとしてきていたが、黒羽もほどほどに酔っ払っているようだった。
酒を飲むたび上下する喉がひどく艶かしい。

――――――何で抱かない?)
他のヤツとは違うのか?
なら、抱いたら…?

更なる疑問が新一の内に浮かび上がる。
今まで新一を抱いてきた人間は、言い訳の言葉を口にしながら何度も新一を求めた。
彼等の瞳に見えるのは欲望だけで、過去に感じていた信頼や友情といったものは見出せなかった。
人は変わるものだと、新一は無感動にその瞳を見ていたけれど…。

でも。
―――――――コイツは、もしかしたら違うかもしれない。


もしかしたら同じかもしれない。
けれど新一は、自分の中に生まれた疑問をそのままにしておける性質ではなく。



(酔ってりゃ酒のせいにできる)
ゆっくりと身体一つ分開いていた黒羽との距離を詰めると、新一は驚いて何かを言おうとする彼の唇を塞いだ。


















































































NEXT




快新ですよ。