「黒羽!」


見慣れた背中を見つけて、新一は大きく声を上げた。
振り返ってこちらを見とめた黒羽に小走りで追いつくと、二人並んで歩きだす。
「オメーもう帰り?」
「あぁ、今日2限以降の講義全部休講。工藤は?」
「オレも」
本日は特定の教授間で会議が行われるらしく、多くの生徒が半日程度は自由時間となっていた。
正門へと向かう生徒の姿も多い。
まだ午前中であるため、家に帰るものもいれば、友人たちと連れ立って遊びに出かけるものもいるようだった。

「なぁ黒羽」
「何?」
「オメー今日暇?」
「特に用事はないけど?」
「じゃ、ウチ来ねぇ?飲もうぜ」

新一はもう一度黒羽と寝たいと思っていた。
何で変わらず求めてこないのかも不思議だったが、他の男と何が違うのか知りたかった。
(また酔わせちまえば流されるかもしんねーしな)
用事がないなら黒羽が断る理由はない。
すぐに頷くだろうと踏んでいた新一だったが、予想に反して黒羽は微妙に悩む顔つきになった。

「ん〜〜〜、それもいいんだけど・・・」
「?」
「どうせなら映画行かねぇ?」
「映画?」
「そう、見たいやつあるんだ」

少し考えた新一は、
(映画の後ウチに誘えばいいか)
そう結論を出すと、
「いいぜ」
素直に頷いた。






「割と面白かったな」
「だろ?こういう映画も甘く見られないよなぁ」
「最後のあの演出はなかなかよかったな、結構展開読めるまでに時間かかったし」
「だな。てか工藤でも時間かかるんだな〜〜〜」
黒羽に連れてこられた居酒屋で料理をつまみつつ感想を語る。
予想よりもずっと面白い展開だったので意外に見入ってしまった新一だ。
「まぁ最後まで読めないってことはほとんどねぇけどな。これは読めなかったほうだぜ?」
「どの辺で気づいてた?オレも結構時間かかったんだよな〜」
「あのシーン、主人公が一人になったときに呟くとこ」
「あ〜〜オレのほうが遅い!くっそー何か負けた気がして悔しいな」
「探偵なめんな〜」
「あはは、しかも工藤は名探偵だかんな〜〜」

そうやって何だかんだと語り合い、工藤邸につく頃には気づけば日付もかわる時分になっていて。
「コーヒーでも飲んでけば?」
送ってもらったのだしと提案した新一に、少し悩んだ黒羽だったが。
「魅力的だけど明日一限あるから遠慮しとくよ」
「そか」
「じゃぁな」
そうして片手を上げて去っていく黒羽を見送って、門を入った新一は、
「しまった・・・」
当初の目的をすっかり忘れていた自分に思わず溜息を吐いた。
(仕方ない、また誘うか・・・)

それなりに楽しんだので、目的を果たせなかったけれども今日のところはよしとしよう。
そう考えた新一は、調子の外れた鼻歌を歌いながら自宅へと消えていった。


























































































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ハウル見ました。
弱虫な魔法使いっていわれると
どうしても連想されるのはハウルではなくヤツですな(笑)