「なぁ、工藤、今日これからヒマか?」
講義を終えて教科書類を鞄へとしまっていた新一に、服部が話しかけてきた。
彼はすでに帰り支度を整えたようだ。
「いや、予定ある」
昨日解決した事件の調書作成に協力するため、講義が終わり次第警視庁へと向かうことになっている新一はあっさりと答える。
新一の応えに、服部は微妙に不機嫌な顔になった。
けれど、不機嫌な顔をされようと、すっぽかして服部に付き合うなんて考えもしない新一だ。
服部は、そんな新一を一瞬見つめ少し考える素振りをする。
「・・・何か用事でもあるんか?」
「警視庁。昨日の事件の調書取るんだ」
その応えに服部は不機嫌な顔を緩めた。
「ほんならオレも一緒行くわ、その後やったら家行ってもええやろ?」
「・・・・・・・・オメー別に警視庁に用事ねぇだろ?」
「待っとるから気にすんなや。ほな行こか」
(用もないのに行ったら警部たちに迷惑だろうが・・・)
新一の気にするところはそちらだったが、ふんふんと鼻歌を歌う服部が気づく様子もない。
勝手に新一の鞄を机から持ち上げて、はよせいなどと言っている。
小さくため息をつくと、新一は鞄を奪い屋外へと歩きだした。
「それにしても、何や最近工藤付き合い悪ないか?」
駅へと向かいながら、ふと思いついたように服部が口にする。
「・・・別に、もともとよかった覚えはねぇけど?」
「あー、それもそうやな」
新一の応えに服部は眉間に皺を寄せて笑った。
事件があれば大抵の場合そちらを優先させてしまう新一である。
「でも最近誰が声かけても予定ある言うやんか。事件なんかはしゃぁない思うねんけど・・・」
今までは誘われればそれなりに昼を食べに行ったり、飲み会に参加したり。
途中退室は多くても、誘い事態にはほどほどに応じていたはずだ。
それが最近では、立場の弱い幼馴染からの買い物の誘いにも、申し訳なさそうな顔をしつつも予定があると断っていたのを覚えている。
服部は、新一のそんな態度が少し気になっていた。
「・・・あー・・・そうか?」
言われて、新一は少し頬をかく。
(・・・そういえば、ここのところずっと黒羽と一緒にいたからな)
考えてみれば最近黒羽と寝るために画策していたから、黒羽以外と出かけた記憶がない。
というか黒羽とでかけるために事件以外は全て断っていた気がする。
「せやせや」
少しばかり非難を込めた口調で服部が言う。
(別にコイツに文句言われることじゃねぇと思うけど・・・)
思いながらも、
「あ〜〜〜〜、悪かったな」
いちいち理由を話すのも面倒なので適当に謝る新一だった。
結局服部は勝手についてくるようだった。
「邪魔するで〜」
そう言って玄関から室内へと入ってくる服部に、新一は小さく溜息をつく。
ようやく調書を取り終えて帰宅したが、既に時刻は夜10時を回っていた。
昨日一日事件で走り回っていたので今日は早めに休むつもりでいたのに、予定外の来客はそれを許してはくれないだろう。
(めんどくせぇな・・・)
心の中で呟きながら、新一はさっさと来客の用事を片付けるべく寝室へと向かった。
「工藤・・・」
息の上がった男が覆い被さってくる。
新一は、必死に快楽を追おうとしていた。
触れてくる手に、何とかして快感を呼び覚ましてもらおうと身を捩る。
けれど、広がっていくのはぞわぞわとした寒気だけで。
どうしたらいいのかと考えていた新一の肌に、ねっとりとした感触が触れた。
(―――――――っ!)
肌を這いまわる舌の感触が、ひどい嫌悪感を呼び覚ます。
(何だこれ・・・!)
(―――――気持ち、悪・・・・!!!!)
ガタン!!!!と大きな音がして、次の瞬間服部はベットの脇の床の上にいた。
「な・・・・工藤!?」
服部を突き飛ばした新一は、はぁはぁと荒い呼吸をしている。
「おい、どういうつも・・」
「わり、ちょっと体調悪いんだ、帰ってくんねぇか?」
文句を言おうとした服部に被せるように、荒い息のまま新一が告げた。
その顔には脂汗が滲んでおり、ひどく青ざめている。
「・・・だ、大丈夫なん!?看病したろか?」
その様子に、流石に服部も文句を言っている場合ではないと、居ずまいを正すと、熱を測ろうと新一の額へと手を伸ばしてきた。
それを振り払うように避けた新一は、
「帰ってくれ」
一言告げると布団の中へと潜りこんだ。
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大変ご無沙汰でした・・・。
結局紛失したネタ帳は見つからず
もう一回書くことに。
同じものは書けないなー・・・。