遠くから聴こえて来るパトカーのサイレン。
眼下に広がるいつもと変わらずキラキラ光るネオンたち。
6月21日午前0時13分。
若干の雲は出つつも、それなりにキレイな月夜の晩だ。




                         
―――――――――コーヒーはブラック派。





「な〜んで誕生日までキッドやってるかね、オレは・・・」
ビルの屋上で一人呟きつつも、怪盗は自分の機嫌がいいことを自覚していた。

カツンカツンと近づいてくる足音。
見当違いの方向に遠ざかっていくパトカーの群れに、誰がココに来るかなんて明白だった。


「よぉ、キッド」
開いたドアから現れた、目下怪盗が片想い中の探偵は、さして怪盗を捕まえる気もなさそうに近づいてくる。
「よぉ。来るとは思ってなかったぜ?」
「近くで事件あったからついでだよ、ついで」
「ふぅん」
「?」


にこにこにこにこ。


怪盗の表情が認識できる程度に近づいた探偵は、何だか異様に楽しそうな怪盗の顔に気がついた。


「・・・なんかオメー機嫌いい・・?」
先代からの教えであるポーカーフェイスも気にせずににこにこしていた怪盗は、
「ん〜実はオレ今日誕生日v」
(誕生日一番にコイツと会えるなんて思ってなかったもんな〜)
ついてる自分に乾杯したい気分だったりもする。

「ホントかよ?」
つーか、そういう個人情報探偵に教えていいのかバカイトウ。
呆れて肩を竦める探偵は、
「さてどうでしょう?」
言いながらもやっぱりにこにこしているアホっぽい怪盗に、
(まさかホントかよ・・・。)
なんて、内心ちょっと焦ったりしてるのだけれど、怪盗が気がつくわけもなく。
にこにこにこにこ。


「そういうのは先に言えよなぁ。
やれるもんなんか何にも持ってねぇけど・・・」

何か先に言ってたらプレゼントを用意してくれそうな口ぶりの探偵に、
「ご心配なく!なんせ怪盗だからv欲しいものは奪い取る!」
プレゼント代わりに唇の一つでも奪ってやろうなんて、
誕生日にかこつけたナイスアイディアを思い付いたりなんかして。

まだまだ奪っちゃうには色々障害多い恋だから、全部を欲しいなんてわがままは言わないけれど、誕生日くらいイイ目見てもいいよな!なんて。
自分に都合の良い結論を出した怪盗が、さてさてどうやって実行してやろうと悩んでいたら、
「ん〜・・・まぁそれはスキにしたらいいけどさ。どうせ捕まえるし。
・・・まぁあれだ。」
ちょっと思案した顔の探偵においでおいでと手招きされた。

さすがに今捕まえる雰囲気ではなさそうだしと近づいた怪盗の・・・。






ネクタイが思いっきり引っ張られて。
そりゃないよ名探偵その引っ張り方は首がしまって逝っちゃうゼなんて思ってるうちに。










ふんわりあたった柔らかな感触。











なんだか知らないけどむちゃくちゃ気持ちよくて、ほんのり苦くて。


うっかり呆然としてしまった怪盗の耳元で、
「ハッピーバースディ」
掠れた声が聞こえたと思ったら。


そりゃもうマッハを超えるスピードで走り去る探偵さんの後ろ姿が見えたりなんかして。
さらにもチラリと覗いた耳元が真っ赤だったりなんかして。









「めーたんてー・・・コーヒーにはせめてミルク淹れてよ・・・」
ヘタレな怪盗は、苦いけどむちゃくちゃ甘い残り味(?)に、
真っ赤になりつつその場にしゃがみこむより他になかった。






怪盗が先に奪われてどうすんだ!













































































































































「いやー・・・美味かった」by探偵さん

っつーわけで誕生日に何もできないサイトの名を返上すべく
大急ぎで書いてみました。
お誕生日おめでとう快斗!!!
こんなヘタレた祝い方しかできなくてゴメン・・・!!!!



ここ暫くずっと漫画描くモードだったので文章書くのが大変でした・・・。