02:夢だと思った。夢ならよかった。




夢だと思った。夢ならよかった。



耳障りな銃声。目の前で大きく跳ねた小さな身体。
それだけで正気を失うのには充分だった。

崩壊寸前の建物から無我夢中で助け出した身体は、ゆっくりと体温を失っていった。
かけつけた主治医があらゆる手を施してくれたけれど、ただ彼女は静かに首を振るだけだった。

もうどうしようもなくて。自分の無力さを呪って。
彼が助け出されるときに呟いた、
「一緒にいて・・・」
それだけを全うするためにここにいる。
彼がせめて、限られた時間を穏やかに過ごせるように。
それだけを叶えるためにここにいる。


そうして束の間意識の戻った彼は、オレに無理難題ばかり注文して。

こんなに泣き出したいときに、笑えなんて言うんだ。
こんなに心が潰れそうなときに、嬉しそうにしろなんて言うんだ。

もう、本当にどうしようもなくて。
でも、彼が望むならどうしても叶えてあげたくて。
必死で作った表情に、彼はおかしそうにヒューヒューとする呼吸で笑った。


それで
―――――――


泣きたいくらい嬉しくて、どうしようもなく切ないことを、勝手に告げて。
オレの返事を聞かないままで、幸せそうな顔をして、さっさと瞳を閉じてしまった。



何だよチクショウ。
何だってんだ。
自分だけだと思うなよ?

オレだって、オマエが好きなんだ。

返事くらい聞いとけバカヤロ。


さんざん文句をいったせいで、オレの腕の中の人の顔は見事に涙でびしょ濡れで、オレは主治医のお嬢さんに後で散々しかられた。















































































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