[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
05:
知っているよ、君が僕を見てないことくらい。
空は晴天。心は曇り。
ようやっと日常を取り戻したオレは、穏やかな生活を満喫してる。
宝石を砕いて、組織潰して。
あの激動の一年がまるで嘘だったかのように優しい毎日。
そりゃそれなりに警戒しなきゃいけないこともあるけれど、
幼馴染と喧嘩したり、気障なクラスメイトと嫌味の応酬してみたり。
守りたかった世界の中で生きている。
「あ~~今日もいい天気」
授業を終えて、幼馴染と下校する。
パフェのおいしいお店があるから今度行こうかなんて、なんて健全な高校生活。
それでもオレには心が曇りな理由があった。
それは時々下校時に目にする光景。
「ちょっと新一!聞いてるの!?」
「あ、わりぃ蘭。映画だっけ?」
「そうよ。日曜封切のヤツ」
「あ~・・・」
ごくごくたまにだけれど、他校のカップルをある通りで見つけてしまう。
その瞬間は嬉しくもあり、同時に少し切なくもあった。
あの時。
誰もが諦めたあの時。
小さな探偵の小さな主治医が、どうせこのままゆくのなら、せめて完成した解毒剤をと。
そう告げたあまりに切ない表情に、オレが意識のない探偵にゆっくりとソレを飲ませたのを覚えてる。
そのまま彼を両親のもとへと運び。
最後の時までついていようと手を握り締めた瞬間に変化は起きた。
もう後はただ息をひきとるだけかと思われた彼が急に苦しみ始め、
オレは人が一瞬にして十数年の時を進めるのを見た。
もとの時代へと身体を戻した彼は、受けた傷さえ綺麗に消して。
それから数日後に目覚めた時には、経験した記憶までもが綺麗に消えていた。
毎日通っていたオレは、彼が目覚めたその時もその場にいたけれど。
記憶がない間に知り合った友人で、たまたま見舞いに来ていたと、適当なことを言って誤魔化した。
それ以来彼とは会っていない。
本当に本当に、彼がいなくならずによかった。
記憶なんてなくても。
ただ彼が幸せそうに笑っていてくれるだけで。
心の底からそう思ったのに
―――――――
。
「人って欲張りでやんなっちゃうよな~」
心の雲も晴れないもんかと、青空を見上げてぼんやり思う。
知っているよ、君がオレを見てないことくらい。
それでもやっぱり、願うことは君の幸せ
――――――
。
「快斗ってばさては一人でこっそりパフェ食べに行こうとしてるでしょ!」
「バーカ、何でそれが欲張りになんだよ!」
「まさか青子と一緒に行って、青子の分まで食べる気だったの!?」
「あはは、バレたか!」
「も~~~!バカイト!」
欲張りな自分は見ないふりして、今日も幼馴染とバカ騒ぎ。
せめて君が最後まで見たがった、笑顔をいつも浮かべていよう。
NEXT